03登って下って登って下って栂海新道
黒岩山からはまた下り…。
そして下ったら…また登り…。
わかっちゃいたけど…辛いな…もうっ!
周りには全く人がいなくなり…一人でテクテク歩いていると…昨日の獣の鼻息を思い出してきた…。
そう思い出すと、右手の茂みがコワイ!
一度コワイと感じ始めたら…恐怖心でいっぱいになり…
両隣の茂みもコワイ!!!
なのでストックを鳴らしつつ、昨日の歌を口ずさみながら歩く…。
文子ノ池の看板が倒れています…直してあげたいけれど…直せる気力と技術がないので、ゴメンナサイと心で唱えて進む。
前を見れば…また登り!
こうして見ていると大した登りに見えないんですが…小さな登り降りでもいくども繰り返していると身体に応えますよ…。
今、ここで、茂みから獣が出てきたら…アウトだよな〜と思いながら茂み近辺はそそくさと歩きます。
私にとっての栂海新道は登り降りだけではなく、常に熊が出てきたらどうしよう〜!との恐怖心との戦いもあったのが辛かった。
さっきのピークを越えて、今は下り道…疲労で足ももつれ始めたので、うっかり右の切れ落ちている場所へ転げないように気をつけて歩く。
そしてまたも広がる登り…。
登っても下っても次のおかわりが次々目の前に広がってくれるのが精神的にきますね。
そうしてやっと着いた…
09時50分サワガニ山に到着
う〜ん…記憶によると相当疲れていました。
ココに辿り着くまで、いくつのアミノバイタル系のサプリを摂取したことでしょう…。
座って休もうかな〜?と思ったりするんですが…後もうチョットだし…先に行った2人をあまり待たせたら悪いし…で進みます。
今振り返れば…もういいじゃん!ムリしないで休むときは休もう!って思うんですけどね…。
その時は追いつくコトだけに必死になっていて…視野が狭くなっています。
いつもは大好きな岩場も…背中のザックが重くて…辛い。
真夏の空の下…登っては下り、また登りが本当にもう…嫌だ…。
最初の頃はうわ〜とかゲーとか思っていたけれど、疲労が溜まり過ぎると無表情になってきます。
再び下った先はこのような鬱蒼とした平坦な道…。
熊が出たら嫌だな〜と思って歩いていたら、進行方向から何やら人の気配が…。
この道を抜けた先に数人の人が居た!
ザックをここにデポして何処かへ向かっていった。
10時51分北又の水場
北又の水場は登山道から5分ほど下った先にある。
水はまだ1.5Lぐらいはあるけれど…。
って言われたんだよね…。
ハイハイ、言われなくったって汲むつもりだったけれど…。
水場に降りて行くと5人ほどの若者パーティーと夫婦のパーティーが水を汲んでいた。
家に帰ったら…いっぱい!ダンナに今回の栂海新道の思い出を話すんだ!そう思いながら順番を待つ。
北又の水場で飲んだ水は冷たくて美味しかった!とにかく貪るようにゴクゴクと飲んだ!
ハイドレーションとペットボトルに水を汲んで…下ってきた道を登山道までまた登る。
シンドーイ!
水場への分岐点まで戻ると若者も夫婦も既に居ない…相変わらずのひとりの栂海新道歩きが続くのだ。
04北又の水場から栂海山荘まで
北又の水場からの登りが…これまた辛い…。
新たに追加された2Lぐらいの水が疲労に拍車をかけるのだ…。
登り切った先のピークを見るが…幾つも見える。
今日の目的地の栂海山荘の場所を確認したいが…したくない気もする。
だって…この先の上り下りがハッキリわかったら辛すぎて…確認する勇気がないの。
とにかく進もう…ユックリでも進んでいけば、いつかたどり着くはず!と思って無の境地で歩きますよ。
さて、ところで…ナゼ?
ここでガスが出てくるのかしら…?
直射日光が当たらないだけいいんだと自分に言い聞かせますが…チョット悲しい。
目の間にハシゴも出現!
この短いハシゴを登るのもシンドイ私。
犬ヶ岳への登りは今まで以上にキツい上に、いくどもいくども登っては下りの登り返しがありました…。
11時37分犬ヶ岳に到着
おおお…やっと着いた…犬ヶ岳!
その痩せた尾根を振り返ると涙が出そうな位素晴らしい…らしいが…ガスっていて見えなーい!
地図によると、今日の登りはこれで最後!
息を切らせて重たい荷物を担ぎ上げる作業もコレで最後!
後もうチョット歩けば栂海山荘に着くはず…!がんばれ私!
おお!この方が栂海新道を切り開いて下さった創始者 小野健さんの牌!
感謝の気持ちをこめてお辞儀。
なんでこんなにガスが出てくるの…?なんでこんなに意地悪なの?ねえ?と
重い体を引きずりながらモヤの中を歩き続けると…。
12時17分栂海山荘に到着!
やっと…やっとやっとやっと!栂海山荘に到着しました!
朝日小屋を出発してから7時間半歩き続けて…やっと着いた栂海山荘!
栂海山荘のテント場にはゴクウとベジーダも座って休憩している。
どうやら食事はとっくに終えて、のんびりしている…。
朝日小屋からのひとり歩きで張り詰めていた気持ちもほどけて、へたへたと座り込む…。
よく歩いたな〜私…うん!頑張った!
ところが…ところがですよ…この後に、更なる苦しみが訪れることになろうとは…到着時の私は想像もできませんでした…。
次回「テント泊で縦走(5)栂海小屋から白鳥山避難小屋まで」へ続きます。