栂海新道…噂で聞くとかなりハードな縦走路。単独登山中心の私には絶対無理!と思っていたが友人2名とチャレンジすることになった。全体計画では栂海新道に入るのは2日目で、1日目の朝日小屋までの移動比較的楽だと思っていた。だが、イブリ山を越えて朝日小屋に着くまでの道のりは想像以上に非常に厳しかった。
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01イブリ山を登る
登山道の看板が立ててある場所の先に下り階段が現れ、その階段を下りた先には吊橋。
下は透けているし、手すりの高さもチョット低めの吊橋を渡り終えて後ろを見ればダムが見えます。
さあ、いよいよイブリ山を登りますよ〜!
地元の朝日町の中学校も授業で登ると聞くイブリ山。
ならば私も比較的楽に登れるはずなので、ちゃっちゃと登ってサッサと朝日小屋に着いて…テントで寝ようと登山開始と共に思っていました。
06時30分登山開始
…イブリ山…いきなりの急登!
そしてゴクウとベジーダってば、ムチャクチャペースが早い!
追いつこうと思うが全く追いつけない…!
歩き出しはゆっくりと…なんて言葉は彼らには無いようで、まるで平地でも歩いているかのようなスピードで斜面を登っていく。
1分も経たない内に呼吸は苦しく…3分も経った頃には汗がダラダラ…
これは…ダメ…!
私の登山に出だしからハイペースはない!
その言葉を聞いた彼らは、迷うことなくさっさと行ってしまった…。振り返ることもなく…。
一度止まって、呼吸を整えます。
開始5分でバテるわけにはいかないのでマイペースに戻って、いつもの登山ペースで歩き直しました。
06時53分一合目に到着
イブリ山の一合目に到着すると余裕の2人がGPSやスマホの設定をしていました。
イブリ山には合目を明記した標識が立っていて一合目から十合目まできちんと全部設置してあるので、心の支えになります。
ちなみに七合目辺りまでは鬱蒼とした樹林帯をひたすら登ったので…この標識がないと心が折れます。
登山道も整備されていて、歩きやすいのですが…ここまで来るのにタクシーを利用しなければならないせいか?私たち以外の登山者を全く見かけません…。
息を整えながら、背負ったザックの重みと今の眠気から判断するに…間違いなく2名のペースに合わせて登るなんてできないよな〜と判断し、2人に
と告げたら…
ふふ。
本当に行っちまいやがった!
誰もいない登山道に一人ぽつんとたたずみ…何だかいつものひとり登山以上に…とっても寂しい気分です。
一人でいるより誰かと一緒での一人の方がずっと寂しいってこういうことかしら?
グジグジ思っている時間も勿体ないので、再びマイペースで歩き始めることに…さっきよりもゆっくりと歩く。
イブリ山は事前に調べて急登があると知っていたとはいえ…やはりしんどい。
また、わかりやすい道とはいえうっかり道迷いをしないように用心して歩きます。
07時14分二合目到着
もちろん、2人が待っていてくれるわけもなく…
と肝も座った。
まあ、単独テント泊登山を幾度か行っているからこそ今回の栂海新道に誘ってくれたのでしょうし、ひとり登山になれきった今。誰かに気を使ってオーバーペースで歩くより一人のほうが気が楽ってもんさ!
ま、明日の栂海新道が核心部だからね〜
あまり代わり映えのしない樹林帯を歩くと眠気が増してくる…転ばないように気をつけて登ります。
3合目付近で、北又小屋から出ていったオジサン3人組に追いつきました。
そして、4合目辺りから暑いと眠気と重さの三重苦で登るペースがどんどん落ちる…。
マイペースで登っていてコレなんだから2人に合わせて登っていたら…どうなっていたことやら…。
次のポイントは五合目のブナ平。
このブナ平にはブナのベンチや水場がある、イブリ山の休憩ポイントらしいから2人が居たりしないかしら…?
08時28分五合目・ブナ平に到着
すみませんね、言葉が悪くて…。
でも、イブリ山もやっと半分!
五合目には水場があるのですが、枯れているケースも多いのであまり当てにしないほうがいいと事前に調べた情報に書いてありました。なので私も水場を見ることなく通り過ぎます。
五合目から六合目は今までの合目、合目の間隔よりずっと短い間隔でたどり着きました。
おお、コレって身体が登山モードになってきたってこと?
それに確か…7合目以降は登りも穏やかになるって書いてあったから…余裕だわ〜!
と、ここで調子に乗った自分をオイオイ恨めしく思うことに…。
六合目を過ぎても登りは続き…七合目の標識に全然たどり着きません。
アレ〜?おかしいな?まだ着かない?と、頭の中は七合目の標識のコトでいっぱいになっていて、ちょっとでも標識に見えるモノを見るたびに
七合目!?
と期待してガン見してしまいます。違うんだよな〜。うん。
もうそろそろ急登はいいんじゃない?チョット休みたい…と思った頃に七合目に到着しました。
そろそろ急登もオシマイかしら〜?と思いきや…
七合目から八合目の登りはさらに辛く感じました…。
たぶん、出だしほどの急登でなくなっているのですが…疲れているんです、眠いんです。
結局一人で朝日小屋に向かうなら猿倉から白馬岳経由で登ると言い張れば良かった…。
眠気でかなりの愚痴愚痴モードになりながら歩いていました。
ほんと、山に来てまでこんな愚痴女になるぐらいなら…自分の意志をちゃんと貫くか、できないないなら断る判断をしましょうよ!情けない私。
ここまで来ると展望も開け周りの山々が見えてステキなんですが…その分直射日光が当たってとにかく暑い!
そう、季節は真夏!しかも今日は雲一つない晴天!
ギラギラとした太陽が上から燦々と照りつけてきて、体力を消耗させていきます。
熱中症や脱水症状を起こさないように、意識して水を飲み、塩タブレットを食べます。
ここまでくれば斜度は今度こそ道は緩やかになるはず?それだけを心の糧に一歩一歩進みます…。
地図が示すとおり、ここまで来ると急な登り登りはないのですが
この三重苦が一歩一歩を重たくさせて、快調に進むことが出来ないのです。
そんなヨレヨレ歩きでも、歩いていれば辿り着くもんです…。
10時15分イブリ山の山頂到着
イブリ山十合目
汗だくになりながら…やっと着いた〜!待望のイブリ山山頂!
うわ〜!山頂なのに誰もいない!
もちろんゴクウもベジーダもいない!
この山で会ったのは三合目で追いついたオジサン3人のみー!
02イブリ山山頂
普段、中間点では大休憩をとらない私ですがイブリ山山頂では荷物を降ろしてベンチに座って休むことにしました…。
かなり疲れていました。
多分ここで今日の行程の半分ちょいを過ぎた位…?
時間も早いから…16時までには朝日小屋に着けるだろう…。
ベンチに座りながらアミノバイタルゼリーとソルティライチグミを食べて休憩。
お向かいに見える山が前朝日と朝日岳か…う〜ん…私にはさっぱり分からん。
10時21分イブリ山の山頂出発
いつまでもこのベンチでダラダラとしていられるが…先はまだまだ!
と、気合を入れなおして歩きだす事に。
再び背負ったテント泊装備一式が入ったザックの重いこと、重いこと…。
この感覚が嫌だからあまり大休憩しないんですよね…私。
イブリ山山頂からはチョット下ります。
木がワサワサ生い茂っていますね。
で、登り返したところで振り向いてみれば先程まで居たイブリ山の山頂が見える。
ついさっきまであそこに居たのに…チョット歩いただけでもうこんなに離れちゃった。
オジサン3人組はまだたどり着いていないみたい。
ってことは…私もそんなにスローペースじゃないよね?
ゴクウとベジーダが早すぎるだけだよ。うん!
この先の登山道も誰とも会わないのかな〜?と思いながらダラダラ歩いていたら…右手の草むらの中から
ガサガサ…ガサガサ!
フーッ!
と鼻息が…!
何ですか…?今の音…と固まっていたら…続けて…
フーッ!フンッフンッ!ブッフー!
今の音って…まぎれもなく獣の鼻息じゃあないですか!!!!
まじびびった。
右手の茂みに何が居るのかを確認するコトもせずにそそくさとその場を去る。
見るより、進め!この場を去れ!
と自分の本能が叫んでいる。
マジ、ビビりすぎて声も出せない…そして、残念なことに…走りたくても走れなかった…なぜならザックが重いから…。
火事場のクソ力が出るでしょう?って思うかもしれませんが、イブリ山登山で既に体力は枯渇し…走れないの…。
今、自分が出せる範囲のスピードでその場から遠ざかる。
見えない獣の姿は私の脳内の中すっかり熊になっており、しかも私は熊にパンチされている光景が頭いっぱいに広がっていた。
怖い…恐ろしい…私なんで登山なんて始めちゃったんだろう?
てか栂海新道はやはり私には分不相応だったんだー!!!
と後悔モードで進んでいると…よりによってコース唯一のクサリ場が現れる。
なんで、よりによって今!クサリ場なのよ!
私の大好物のクサリ場…今はただの立ち塞がる壁…。
後ろから獣が追ってきやしないかと気は焦るけれど、ココで滑って落ちて怪我でもしたら絶体絶命のピンチ!というコトで心を落ち着けて用心深く登る。
鼻息を聞いた場所から早足で10分程移動した場所まで進んで来て…ようやく一息つけた。
ここで座り込みました…。
この先もまだまだあるのにすっかり心は折れている。
真夏の炎天下の下、寝不足で目の下にクマ作って、暑くてベトベトになって…ゴクウとベジーダには置いて行かれて…何やってんだ?私。
家にはダンナが居て、ダンナと一緒にいればクーラーの効いた涼しい部屋で美味しいもの食べて、ワガママ言い放題ができるのに…。
なんでわざわざキツイことしているんだよ私。
てか、ダンナめ…私がこんな怖い目にあっているのに…あいつ…今頃布団の中で今日は私、何をしようかしらん?とウキウキしているに違いない…
なんだか怒りがこみ上げてきた…。
今更引き返すなんて怖くて嫌だし、とにかく進むしかない!
この怒りや恨みが私のパワーを引き出してくれたので立ち上がって進みだす。
野生動物に自分のコトをアピールするためにストック同士をカチャカチャ叩き合って音を出すことに。
そう、私ってば今回熊よけ鈴忘れてやんの!もう、バカ!